UVとは?
私たちは誰もが太陽の紫外線(UV)を浴びています。そのうえ、現代社会では、ビジネスやレジャーで人工的な光線を浴びる人も増えています。もともと皮膚に備わっている細胞の防御システムは加齢に伴い機能が徐々に衰えます。また、代謝変化で、内因性フリーラジカルの量が増えます。私たちを取り巻く環境も、スーパーオキシド・ラジカルの生成に関わっています。このフリーラジカルは肌の老化や色素異常の大きな要因であり、UVや汚染物質はすべてこのフリーラジカルの生成を促進するのです。
そのため、肌につけるスキンケアの中でも、日焼け防止は、皮膚損傷の悪化やしみの出現から肌を守るために特に重要です。日焼け防止剤は、どれもすべて同じではありません。それは、さまざまな波長の光線から肌を守るためにさまざまなタイプの成分があるからです。UVが何なのか、UVが肌にどのような影響を与えるのかを理解すれば、より多くの情報に基づいた、より良い選択が可能になります。
太陽からは可視光線、熱、紫外線などが放射されます。UVC(紫外線C波:波長100~280nm)はオゾン層に吸収されますが、UVA(紫外線A波:波長315~400nm)の大半、さらには、UVB(紫外線B波:波長280~315nm)の10%は地球の表面に到達します。UVAもUVBも人の健康に大きな影響を与えるのです。
UVは少量ならビタミンDの生成に不可欠ですが、浴びすぎると肌や目、免疫機能に急性・慢性の健康被害を与える可能性があります。UVBは表皮を貫通し、ほとんどの表皮損傷の原因となります。これはUVBに紅斑やサンバーン(日焼け)を起こす力があるからです。メラニン形成を引き起こすメラノサイトを刺激するため、「日焼け光線」と呼ばれています。UVBも細胞を刺激して表皮を厚くします。これは、身体がさらにUVダメージを受けないようにするための防御反応です。UVBを多く浴びると、皮膚がんを患う可能性が高くなります。UVBがどのようにして皮膚がんを発生、進行させるのか、その正確なメカニズムはまだわかっていません。色素沈着をきたす希な疾患、色素性乾皮症の患者の中には、UV曝露で生じたDNAの損傷の修復能力が低下している人がいます。このような患者で皮膚がんの発生率が大きく高まることから、UVがDNAを直接傷つけることが、UVの曝露とがんの発生を結び付けるメカニズムである可能性が示唆されます。
UVAは、すでに皮膚の上部細胞にあるメラニン色素を活性化します。そのときできるのが、すばやく発現して、すばやく消えるサンバーンです。さらに、UVAは皮膚の奥深くまで貫通し、真皮を支えるコラーゲン線維とエラスチン線維のダメージへとつながります。これは、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)のコラーゲナーゼ(真皮マトリックスと肌の老化の原因となる酵素)が増加するためです。最近の研究では、UVAが皮膚がんの発生を高めるという可能性が強く示唆されています。UVAがダメージを与えるメカニズムはまだすべて解明されていませんが、UVAが細胞の酸化ストレスを増加させるという仮説が強く支持されています。
UVプロテクションの意味を理解する
日焼け止めの有効成分は2種類、ミネラルフィルターとケミカルフィルターです。それぞれ違うメカニズムで日光から肌を守り、安定させます。
よく市販されている日焼け止めにはケミカルフィルターが含まれています。こうした製品は次に挙げる有効成分を2種類から6種類組み合わせるのが一般的です。
オキシベンゾン(ベンゾフェノン)、アボベンゾン(ブチルメトキシジベンゾイルメタン)、オクチサレート(サリチル酸エチルヘキシル)、オクトクリレン、ホモサラート、オクチノクセート(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)
さまざまな研究から、酸化亜鉛か二酸化チタンのどちらか一方、もしくはその両方を含有するミネラルの日焼け止めは、ケミカルフィルターよりも身体への害が少なく毒性が低いことが分かっています。しかしながら、ミネラルフィルターとケミカルフィルターが組み合わされた製品はほんのわずかしか販売されていません。
市販の日焼け止めはSPFを表示して販売されています。このSPF値は製品がどの程度UVBをカットできるのかを示す数値であり、UVAカットの数値ではありません。残念ながら、最近日焼け止めメーカーの間では、R&Dが可能な、できる限りSPF値の高い製品を作り出すことが競われています。まさにSPF値を戦場にしたマーケティングのバトルが展開されているのです。しかし、消費者にはその数値の意味がしっかりと理解されていません。
SPFの防御効果を取り巻く最大の謎と誤解の1つが、SPFの数値そのものはUVプロテクションの量ではない、というものです。そうではなく、日焼け止めを使用した場合、UVBで肌が赤くなるのにどのくらい時間がかかるのかを示しているというのが正しい解釈です。この点は変わることが期待されているものの、現在でも多くの日焼け止めが高いSPF値を掲げています。専門家の中には、米国の消費者団体環境ワーキンググループ(EWG)が実施した1400種類におよぶ日焼け止めの調査結果から、こうした高い数値は誤解を招くだけでなく、危険を及ぼす恐れもあると考えている人たちもいます。
多くの消費者は、SPF30はSPF15の2倍効果があるのではないかと考えることでしょう。しかし、実際のところ、この2種類はほとんど違いがありません。割合でみると、SPF15は照射されるUVBの93%をカットします。一方、SPF30では97%、SPF50では98%がカットされるのです。
米国皮膚がん財団は、ごく一般的な毎日のUVケアには、日焼け止めには波長の広い(UVA/UVB)SPF15以上のものが必要だという主張を変えていません。SPF50はSPF15よりも5%多くUVをカットできますが、マイナス面は、SPF50には、はるかに濃度の高い在的内分泌かく乱・刺激ケミカルフィルターが含まれていることです。ラボラトリーの研究結果から、一部のUVケミカルフィルターにはホルモンと同じような作用をもたらす可能性があるということが分かっています。また、医師からも、日焼け止めに関連した皮膚アレルギーが報告されています。そうしたことも、日焼け止めを頻繁に使用すると、意図せず人体に健康被害がおよぶという重要な問題提起となります。ケミカルピーリングなどの施術をすませた肌は、浸透性が高まり、敏感に反応する傾向があるため、治療後の肌にはミネラルフィルターの使用が望まれます。
UVプロテクションの強さに関係なく、塗り直さずに2時間以上効果が持続できる日焼け止めはありません。SPF値が高いと誤った安心感を与え、必要以上に肌を焼くことになりかねません。日焼け止めの塗り直しは、UVを浴びた時間をゼロにリセットするというよりも、最初に塗った日焼け止めのブースター役を果たします。例えば、日焼け止めを60分と120分で2回塗った場合、サンバーンあるいはMED100%に対する防御の効力はわずか45分程度しか伸びません。MEDとはminimal erythema dose(最小紅斑量)の略で、太陽の陽射し(UV強度)やサンバーンが生じる可能性のある人工的光源を浴びたときのサンバーンに対する個人の傾向を見極めるために使われる国際的な指標であり、閾値です。UVダメージは、UVB照射による紅斑量がなくても生じる場合があり、たとえ最良の日焼け止めであっても、肌を守るために重要なこととはいえ、総合的な対策の一部でしかないと考えるべきでしょう。
予防が治療よりもベター
皮膚がんはさまざまな形態がありますが、世界中でみられる最も一般的なタイプのがんです。太陽光を浴びすぎることが主な原因となり、全体の罹患率が上昇しています。主な皮膚がんのタイプにはメラノーマ(悪性黒色腫)と非メラノーマの2種類があり、非メラノーマの方がよくみられます。 メラノーマはほぼ色素が沈着しており、通常、色素沈着した皮膚損傷から発生します。
非メラノーマ皮膚がんの発生率は上昇しており、米国だけでも毎年100万人の新患がいるとみられています。また、非メラノーマ皮膚がんの生存率は、早期発見であれば99%を超えるので、皮膚科医による観察と予防が重要になります。
気になるそばかす、しみがある場合は、専門の医師に診察してもらいましょう。メラノーマではないかもしれませんが、もしメラノーマであれば、早期発見、早期治療が不可欠です。
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